「地獄の釜の蓋が開く」
親父か誰かに、子供の頃に聞かされた話。

毎年、正月と7月の薮入りの頃
(1月15、16日。7月15、16日)
通称「赤門寺」(三宮神山大鷲院勝専寺)の
お縁日がある。

閻魔堂が御開帳されることから
そんな言われ方がされたのだろうか、

ことに新暦のお盆の7月のお縁日では
子供心にも、地獄や現世や知らない世界を感じ取れる
不思議な空間を与えてもらえた気がする。












境内に立ち上る線香の煙、
人々の踵が跳ね上げる砂埃、
縁日の焼き物のニオイ
汗のニオイ
見世物小屋のかび臭さ、
梅雨の終わりの湿度
今はないけどアセチレンガスのニオイ
発電機の音、
毎年の雷鳴


それらが、狭い境内と
狭い参道とを
人々の(とりわけ小中学生のお兄さんやお姉さんの)奇声や歓声とともに
埋め尽くしている。












「お代は見てのお帰りだ」と、
子供の頃見せてもらった
見世物小屋の人魚姫や狼少女や
ろくろっ首ののお姉さん達は
今ごろどこでどんな風に暮らしているのだろうか。

僕らに、あんなに強い、暑い夏の一瞬を
刻み込んでくれた人たちは。








昔も今も、夜店は不潔だと言う人がいる。
夜店にはしゃぐ子供たちに、眉をしかめる人がいる。
PTAの見回りなんぞも、僕らの時代(30年前)からあった気がする。

でも、縁日で腹を壊した友達もいない。
清潔でないことがすなわち、不潔と言うわけではない。
半端な食堂や出来合いの菓子よりも、縁日の出来立ての方が
うまかったりするのは、事実だ。








左手人差し指を突き指して
ずっと「矢沢栄吉」状態でタコヤキをやくおっちゃん







金魚をスクワレすぎて、金魚不足に悩む
白髪の金魚すくいのばーちゃん。










浴衣姿の少女達は、昔よりも増えた気がする。
みなそれぞれに、携帯を片手に、
人ごみの中をアクセスしている。
でも、昔同様の、油っぽい汗の顔。
一生懸命してきたであろう化粧も
すっかり消え去って、
名残のパールやラメがマブタで光るのみ。

露骨に素顔(キャラ)が出てしまうのが
祭りのいいところかな。









「嘘をついたら、お閻魔様に舌を抜かれる!」

誰に教わったんだっけ。


嘘なんか、ついていられないよ
夏の祭りは。










2002/07/15


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